アプリを別のデベロッパーアカウントに移管しても売却前の注文は売り手に残る、それが返金にどう影響するかを解説します
アプリを別のデベロッパーアカウントに移管すると、ユーザーとサブスクリプションは移りますが、移管前の注文と支払い記録は元のアカウントに残ります。Apple と Google Play で誰がどの返金を行えるのか、どの返金の仕組みが壊れるのか、契約前にお金の面で何を決めておくべきかを解説します。

要点
- Google Play でアプリを別のデベロッパーアカウントに移管した場合、移管前に作成された注文は元のアカウントに残ります。Google によると、それらの注文の返金は元のアカウントから、または Google Play Developer API を通じて行う必要があります。
- Google Play は移管時に、アプリのユーザー、統計情報、評価、レビュー、サブスクリプションを移管先アカウントに移しますが、一括エクスポート、推定売上レポート、収益レポートは移りません。
- App Store での移管後、Apple が受け取り側に提供する支払いと売上の情報は、移管後に発生した取引の分だけです。元のデベロッパーは移管前の支払いと売上の情報に引き続きアクセスできます。
- Apple のアプリ移管ガイドには、移管前に行われた購入の返金を誰が負担するかが書かれていません。そのため、買い手と売り手は売買契約でこの点を決めておくべきです。
- Google Play によると、連携サービスの権限とリンク設定はアプリと一緒に移管されません。そのため、売り手のアカウントに紐づいた返金とチャージバックの仕組みは、新しいオーナーが作り直す必要があります。
- App Store Server Notifications の URL は App Store Connect の App information でアプリごとに設定し、In-App Purchase キーはアカウントの Account Holder または Admin が発行します。新しいオーナーは移管直後に、自分のアカウントでこの両方を設定するべきです。
- Google Play の 15% のサービス手数料ティアに該当するデベロッパーの場合、Account Group 間で移管されたアプリのその年の収益は、最初の $1 million に向けて両方のグループの合計に算入されます。
Google のヘルプページはこれを一文で述べています。アプリが移管される前に作成された注文は、元のアカウントに残ります。つまり、アプリを別のデベロッパーアカウントに移管すると、サブスクライバーは買い手に移りますが、購入履歴は移りません。その履歴に紐づいた返金、紛争、サポート依頼が自然に片付くことはありません。それらはストアのルールが指す相手に届きますが、それが代金を受け取った側とは限りません。Apple と Google の扱いは異なり、Apple は Google ほど多くを明示していません。ここでは、各ストアが何を文書化しているか、移管後に返金の仕組みのどの部分が静かに機能しなくなるか、そしてどちらかが署名する前に何を書面にしておくべきかを説明します。
アプリを移管したときに移るものと残るもの
どちらのストアも、移管を今後のオーナーの変更として扱います。アプリ、ユーザー、評価は移ります。過去の財務記録は、ほとんど移りません。
| 項目 | App Store での移管 | Google Play での移管 |
|---|---|---|
| ユーザー、評価、レビュー | アプリと一緒に移る | アプリと一緒に移る |
| 有効なサブスクリプション | 更新は継続、新しいアプリ固有の共有シークレットで検証 | アプリと一緒に移る |
| 移管前に行われた注文 | 売上と支払いのデータは元のデベロッパーに残る | 元のアカウントに残る |
| 移管前の注文の返金 | Apple の移管ガイドに記載なし | 元のアカウントまたは Google Play Developer API から実行 |
| 売上と財務のレポート | 受け取り側は移管以降のデータを取得 | 一括エクスポート、推定売上レポート、収益レポートは移らない |
| 連携と権限 | App Store Connect の Webhook は受け取り側に移る | 連携サービスの権限とリンク設定は移らない |
| プロモーションコード | 移管後は新しいコードを発行できない | 発行済みのプロモーションコードは引き続き有効、プロモーションは移らない |
App Store の場合
Apple のルールはデータに関するものです。移管する側のデベロッパーは、移管前の支払いと売上の情報へのアクセスを保持し、移管後のすべての情報へのアクセスを失います。受け取り側が受け取るのは、移管後に発生した取引の支払いと売上の情報だけです。Apple の移管ガイドは、移管前に行われた購入の返金について触れていません。後から発生した返金が誰の収益から差し引かれるのかについても、何も書かれていません。
Google Play の場合
Google の方がより明確です。ユーザー、統計情報、データ、コメント、評価、サブスクリプションは移管されます。移管前に作成された注文は元のアカウントに残り、そのうちのどれかに返金が必要になった場合、Google によると元のアカウントに戻るか、Google Play Developer API を使う必要があります。売り手のアカウントは、売却の日に役目を終えるわけではありません。一部の返金を行える唯一の場所として残り続けます。
アプリ移管後に返金を行うのは誰か
どちらのストアでも、ほとんどの返金はデベロッパーが関わらずに決まります。返金リクエストは Apple 自身が処理します。Google Play では、購入者は多くの購入について 48 時間以内なら自分で返金でき、それ以外は Google のサポートが返金を認めます。移管によって、この仕組みが変わることはありません。変わるのは、誰が返金を確認できるか、そしてデベロッパーの対応を求める数少ないフローに誰が対応できるかです。
Google Play で自分から返金したい場合
長年のサブスクライバーが新しいオーナーに連絡してきて、売却の2か月前の請求分を返金してほしいと頼んだとします。新しいオーナーは自分の Play Console から返金できません。その注文がそこにないからです。売り手がログインして返金するか、売り手のアカウントへの API アクセス権を持つ誰かが Google Play Developer API を呼び出す必要があります。売り手がアカウントを閉鎖していたり、連絡がつかなくなっていたりすれば、その返金は行き詰まります。Google は、移管後に元のアカウントを閉鎖した売り手に $25 の登録料を返金するとさえ案内しています。だからこそ買い手は、そうなる前に移管前の返金の扱いを確実に決めておくべきなのです。
Apple が独自に認める返金
App Store では、返金するのはあなたではなく Apple です。Apple が移管前の購入を返金した場合、その支払いと売上の記録は元のデベロッパーのもとにあります。Apple の移管に関する文書には、どちらの収益がその返金を負担するのかが書かれていないので、どちらの側も思い込みで判断するべきではありません。契約書に書いておきましょう。
証拠を求める2つの返金フロー
デベロッパーに何かを求める返金フローは2つだけです。Apple は CONSUMPTION_REQUEST を送信し、Send Consumption Information を通じて消費データで回答するまでに 12 時間の猶予を与えます。Google Play はチャージバックレビューを送信し、orders.reviewrefund を通じて 24 時間以内に回答する必要があります。どちらの回答も、アプリではなくアカウントに属する認証情報で署名されます。移管で問題が起きるのはここです。
移管中に壊れる返金の仕組み
移管されたアプリは、返金側が機能しなくなっていることに誰も気づかないまま、何週間も販売を続けることがあります。
Apple の通知 URL と In-App Purchase キー
App Store Server Notifications の URL は、App Store Connect の App information でアプリごとに設定します。Apple の移管ガイドはこれに触れていないので、新しいオーナーは初日にその画面を開き、本番環境とサンドボックスを自分のサーバーに向けるべきです。まだ売り手のエンドポイントが設定されていれば、そのアプリのすべての CONSUMPTION_REQUEST は買い手が運用していないサーバーに届き、12 時間が何の対応もないまま過ぎていきます。
回答は App Store Server API を通じて送信され、これには In-App Purchase キーが必要です。このキーは Users and Access で Account Holder または Admin が発行し、Apple ではそれぞれ1回しかダウンロードできません。売り手のキーは売り手のアカウントにあります。買い手は自分のキーを発行し、売り手は引き継ぎが終わったら自分のキーを失効させるべきです。
Apple の共有シークレットと Webhook
自動更新サブスクリプションのあるアプリについて、Apple は売り手に対し、移管前にアプリ固有の共有シークレットを発行して受け取り側と共有するよう求めています。受け取り側はそれを使ってサブスクリプションを検証します。移管が完了したら、組織外の人がそれを持たないように、受け取り側は新しいシークレットを発行するべきです。App Store Connect の Webhook も受け取り側に移管されます。移管後に自分のサーバーへイベントが届くのを望まないなら、事前に削除しておくよう Apple は売り手に勧めています。
Google の権限と Cloud プロジェクト
Google によると、連携サービスの権限とリンク設定は移管されません。Google は売り手に対し、アプリが使用している Google Developers Console のプロジェクトに、移管先アカウントを Owner として追加するよう求めています。Play では、リアルタイムデベロッパー通知のトピックと、Developer API の呼び出しに使うサービスアカウントは、たいていそこにあります。サービスアカウントに買い手の Play Console へのアクセス権が付与されていなければ、無効化された購入の確認は失敗し、orders.reviewrefund の回答を 24 時間以内に送信できません。

移管が返金とチャージバックにもたらすコスト
ここまでの仕組みは、3つの場面でお金の問題になります。
売り手に支払ったユーザーにサービスを提供する
売却の1か月前に $59.99 の年間プランを購入したサブスクライバーを例に考えます。Google Play では、その注文は売り手のアカウントにあります。App Store では、その支払い記録は売り手のもとに残ります。買い手はその分の支払いを受け取らないまま、そのサブスクライバーが残りの期間に使うコンピューティング、サードパーティ API の呼び出し、ストレージを負担し続けます。そのサブスクライバーが後から買い手に返金を求めても、Google Play では売り手なしに返金できません。こうした前払い済みのサブスクリプションは、収益を伴わずに買い手が引き受けるコストなので、契約時に数えておきましょう。
買い手が販売していない注文へのチャージバック
2026年8月3日以降に行われた Google Play の注文では、デベロッパーはチャージバックの購入代金から Play のサービス手数料を差し引いた額と、銀行のチャージバック手数料を負担します。チャージバックは、一度決まれば銀行の判断として確定します。Google の移管ページには、売り手のアカウントに残った注文についてこのコストがどう扱われるかが書かれていません。Google が明示するまでは、移管前の注文へのチャージバックを誰が支払うのか、そしてそのチャージバックレビューに誰が回答するのかを、売買契約に書いておくべきです。
15% ティアでは同じ収益が二重に数えられる
Google Play の 15% のサービス手数料は、デベロッパーの毎年の収益のうち最初の $1 million に適用されます。アプリが別々の Account Group に属するデベロッパーアカウント間で移ると、その暦年のアプリの収益はすべて、両方のグループの合計に算入されます。Google 自身の例では、Account Group A で $100,000 を稼いだアプリが Account Group B に移ります。その $100,000 は、両方のグループの最初の $1 million に向けて数えられます。しきい値に近い買い手は、自分の売上から想定されるよりも早く標準の手数料率に達する可能性があります。
アプリを移管する前に決めておくこと
売り手の場合
- 必要なレポートをダウンロードしておきましょう。Google の一括エクスポート、推定売上レポート、収益レポートは移管されず、Apple の受け取り側はあなたの履歴を見られません。
- 移管前の返金と紛争が一通り片付くまで、元のアカウントを開いたまま連絡がつく状態にしておきましょう。
- App Store での移管前にアプリ固有の共有シークレットを発行して共有し、その後、In-App Purchase キーを失効させ、移管後に動いてほしくない Webhook を削除しましょう。
買い手の場合
- 初日に自分の App Store Server Notifications の URL を設定し、自分の In-App Purchase キーを発行しましょう。
- 自分の Play Console でサービスアカウントにアクセス権を付与し、リアルタイムデベロッパー通知が自分のエンドポイントに届くことを確認しましょう。
- 前払い済みのサブスクリプションと最近の高額な購入の一覧を入手し、収益なしでサービスを提供することになる対象を把握しておきましょう。
- 移管前の返金、チャージバック、チャージバックレビューの扱いを、売り手側の担当者名とともに売買契約に盛り込みましょう。
RefundHalt は、各アプリを所有するアカウントの認証情報を使ってアプリに接続します。移管後は、新しいオーナーのアカウントからアプリを接続してください。それ以降、消費リクエストとチャージバックレビューは新しいオーナーに届くようになります。
よくある質問
- アプリを別のデベロッパーアカウントに移管すると、サブスクリプションも移りますか?
- はい。Google Play はユーザーとサブスクリプションを移管先アカウントに移します。App Store では自動更新サブスクリプションは継続し、Apple は受け取り側が検証できるように、アプリ固有の共有シークレットを共有するよう売り手に求めています。残るのは、移管前の注文と支払いの履歴です。
- Google Play で、アプリ移管前に行われた注文を返金するのは誰ですか?
- 元のアカウントです。Google によると、移管前に作成された注文は元のアカウントに残り、その返金はそのアカウントから、または Google Play Developer API を通じて行う必要があります。新しいオーナーは自分の Play Console から返金できません。
- 移管後の App Store の取引で支払いを受けるのは誰ですか?
- 受け取り側は、移管後に発生した取引の支払いと売上の情報を受け取ります。元のデベロッパーは、移管前の支払いと売上の情報へのアクセスを保持します。Apple の移管ガイドには、移管前の購入の返金を誰が負担するかが書かれていません。
- アプリの移管後、App Store Server Notifications の URL は変わりますか?
- Apple の移管ガイドはこれに触れていないので、新しいオーナーが確認するべきです。URL は App Store Connect の App information でアプリごとに設定します。新しいオーナーは自分のサーバーに向けるべきです。そうしないと、CONSUMPTION_REQUEST の通知と、その 12 時間の回答期限が売り手側に向かってしまう可能性があります。
- 移管は Google Play の 15% のサービス手数料ティアに影響しますか?
- 影響することがあります。アプリが別々の Account Group に属するデベロッパーアカウント間で移ると、その暦年の収益はすべて、両方のグループの最初の $1 million に向けて数えられます。買い手は、自分の売上だけの場合よりも早く標準のサービス手数料率に達する可能性があります。
出典と参考資料
- App Store Connect Help: Overview of app transfer
- App Store Connect Help: App transfer criteria
- App Store Connect Help: Enter server URLs for App Store Server Notifications
- App Store Connect Help: Generate keys for In-App Purchases
- App Store Server API: Send Consumption Information (12-hour response window)
- Play Console Help: Transfer apps to a different developer account
- Play Console Help: Updates to refund protection and chargeback cost responsibility
- Google Play Developer API: orders.reviewrefund
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